高尾山や小仏山地周辺で見られる花や植物をまとめた「高尾山に咲く花」(有隣堂)が3月5日、発売された。
高尾山などで見られる花や植物約550種類を写真付きで紹介する同書。サクラだけでもソメイヨシノのほか、ヤマザクラやカスミザクラなど8種類を取り上げており、茎や果実といった特徴からも植物が特定できるよう工夫されている。写真は全て山内で撮影されたもので、高尾山の植物の記録として残すため撮影日も付けた。花を見ることができる時期やどのような環境に咲いているかなどの解説も充実。巻末には植物に関する用語解説をまとめて掲載するなどこだわった。
植物分類学が専門で、神奈川県立生命の星・地球博物館(小田原市)の名誉館員である勝山輝男さんと写真を担当した村川博實さんの2人が手掛けた。勝山さんは神奈川県の丹沢山地を題材として、2018(平成30)年に同社から出版された「丹沢に咲く花」の編集に専門家として協力。有隣堂の担当者は「その後、勝山さんから村川さんの撮影した写真を使った『高尾山に咲く花』の企画の話があり、出版に至った」と話す。
「高尾山は東京の山だが、その周辺は東京と神奈川県との境界となる小仏山地となっており、神奈川県から見ても相模川・多摩川の分水嶺となっている重要な地域。フォッサマグナ地区の周縁にあたる小仏山地は、その中心にあたる丹沢・箱根とは隣接するものの、その植生には違いがあり、山地を限った植物図鑑の出版は意義がある」と担当者。
「村川さんはアマチュア写真家だが、これまでにも植物図鑑などに写真が掲載されており、植物の特性を伝える写真を多く撮影している。彼が10年以上もの長い年月をかけて撮りためた植物や花の写真を使った図鑑を出版することにより、その時に高尾山及びその周辺に実際にあったことを伝えたい」とも。
春から夏、秋と季節の経過に加えて、低木から高木へと木の高さにも配慮して並べるなど随所に工夫を施した。「花の図鑑ではあるが、花の部分だけを強調するのではなく、葉や茎、植生環境などがわかるものを極力採用した。同じように見える花であっても、周囲の状況から違いを把握し、種を特定しやすいように配慮した。一部の花だけでなく、葉や実、紅葉などに特徴があるものについては部分の写真も付けた。解説は字数に限りがある中で、その種の特徴を示すように工夫した」と担当者。「写真を見ながら目的の植物を探すことができるように想定して作った。20~30ページをめくれば、目的の植物が見つかるように考慮した」と説明する。
当初は昨年に出版する予定だったが、「コロナ禍の影響で、出版打合せや編集作業ができなくなり、出版を延期せざるを得ない状況となった」と振り返る。「花の咲く時期も考慮した結果、多くの人に親しんでいただくためには春の出版が望ましいとして、1年遅れの刊行となった」とも。
「高尾山や小仏山地周辺の登山者やハイカー、植物や花に興味のある方に広くご利用いただけるとうれしい」とした上で、「高尾山や小仏山地周辺は、コロナ禍にあっても気軽に、安心して野外で楽しめる場所として八王子市民の皆さんをはじめ多くの方々に親しまれていると思う。最近は高尾山を経由して陣馬山や小仏城山にも足を延ばす方も増えているよう。散歩やハイキングの際に本書を携行して、気になった植物の名前を調べるなど、気軽にご利用いただければ」とアピールする。今後については、「高尾山、丹沢と共に火山に特有な環境を有する箱根についても取り上げたい」と意気込む。
価格は1,980円(税込み)。