八王子に牧場を持つ磯沼ミルクファーム（八王子市小比企町）が現在、放牧場でのオープンカフェのオープンに向け資金支援者を募集している。

クラウドファンディングを行っている磯沼ミルクファーム

　京王線・山田駅から徒歩5分の場所に牧場を展開している磯沼ミルクファーム。1952（昭和27）年に開業した。今回、隣接し放牧場として利用してきた1000坪の土地に、新たに約60坪の建物を建て、来春にも牧場が運営するショップとバーゼル洋菓子店（高倉町）によるカフェを展開する計画を立てている。同所では今後、イベントの開催なども見込む。

　行政に開発許可申請を行う中で、新たに約160本の植樹と雨水処理設備を整える必要があることが判明。植栽だけでも200万円以上の費用がかかることから、12月8日からクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE（キャンプファイヤー）」を利用して、支援を呼び掛けている。

　目標を達成するかどうかにかかわらず集まった金額が起案者に支払われるオールイン方式を採り、3,000円～100万円までさまざまなコースを用意している。動物写真家として活動する高田千鶴さんによるオリジナルポストカードのほか、5,000円からはカフェがオープンした際に使うことができるソフトクリームの引換券、1万円からは牧場オリジナルの保冷バッグ、10万円では子牛の命名権など牧場を生かしたリターン品を用意する。

　当初300万円を目標にしていたが、開始11日目に達成。現在は500万円を新たなゴールに設定している。今月28日時点で約230人、約337万円の支援が寄せられている。

　プロジェクトに携わる磯沼杏さんは「長きにわたって放牧場として使わせていただいたが、先方が土地を処分することになり、これまで使わせていただいたのと、隣地ということもあるので取得することにした」と話す。「先々のことを考えて、しっかりと開発許可を取った上で建物を建てようと思った。その中で植栽や雨水処理の話が上がってきた。今回、私たちにとってはすごく大きな額の事業を動かしているが、新たに出てきたものにどうやって対応しようか考えた時に、私たちがやることを知ってもらいたいという思いもあって、クラウドファンディングを始めることにした。思いを持ってかかわっていただき、みんなで作り上げていく形にできれば」とも。

　目標を達成したことについて、磯沼さんは「想定以上のスピードで皆さんから支援をいただけてびっくりした。これだけいろんな人に期待されている牧場なんだということをひしひしと感じた。支援していただいたお金以上に思いを背負った。今やってよかった。これから立ち上げるまでの大きなエネルギーになるし、このプロジェクトを磯沼牧場の節目から社会の財というと大げさだが、それくらいの責任を持ってやらないといけないと思った。すごく勇気をもらった」と話す。

　「お客さまの自然や酪農へのニーズの高まりや地元で楽しみたいという思いがコロナ禍でぐっと高まったと感じる」としたうえで、新設する建物については、「その機能を新たに持たせたい。牧場の自然の恵みを楽しめるようにすることが今回のコンセプト」と磯沼さん。「これだけ広く豊かな緑地がこの場に残り続けることに一番の価値がある。すぐ側に人が住む中で、八王子の牧場や農業の豊かさがあの景色の中にギュッと詰まっている気がする。街の憩いの場や人々の発信の場になったらいい。グーグルアースでどこへでも行った気になれる時代だからこそ、見る、聞く、触る、嗅ぐといったリアルなことが楽しめることへの価値は上がってきていると思う。一緒にこの場所を楽しんでいくスタイルにしたい」とも。

　磯沼さんは牧場がある小比企を「都市と農業がマッチしているという23区にはない豊かさが凝縮されているような場所だと私は信じている。八王子の方が自信を持って紹介できる場所にしたい」と話す。「次の世代に向けて、小比企の一帯は必ずや八王子らしい魅力を持つところになるはず。この価値に共感してくれる人を増やしていけるような場所にしていきたい。地域の方に必要とされ愛される牧場にしていくことで、この先100年のバトンをつないでいきたい。その立ち上がりに多くの方にかかわっていただけたら。かかわったことを後悔させないようにすることが私たちの仕事」と意気込む。

　支援募集締め切りは1月15日23時59分59秒。