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「一番できない人に歩幅を合わせて進んでいく」-トイル&モイル・岩崎貞文さん

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 「フラチナリズム」だけでなく、メジャーデビューシングル「民法第709条」のプロモーションビデオが過激すぎると公開後わずか3日で「自主規制」の形で公開中止となったことでも知られる「ミオヤマザキ」、東京・羽村市出身のロックバンド「LIFriends(リフレンズ)」のマネジメントを担当している同社。まだ20代だという岩崎さんが先頭に立ち、さまざまな活動を行っている。

■もともとはバンドマンだった

-会社を始めたきっかけは?
岩崎 「僕自身、25歳までバンドをやっておりまして。その時はハウンドドッグのブッチャー橋本さんと八島さんがプロデュースをしてくださっておりました。バンドを辞める際、今の会長から『バンドを辞めたら俺のところに来い』と言っていただけて、そこからまず六本木の『Morph-Tokyo』というライブハウスでブッキングの仕事を始めました。その後、今の会社をいただき、アーティストマネジメントを始めました」

-リフレンズとの出会いが大きかったようですね。
岩崎 「最初に彼らを見つけ、始まったのが会社のスタートでもあります」

-彼らの魅力は?
岩崎 「箇条書きであげていくとすると、ライブでのお客さんの老若男女と層の広さ、メロディーラップという入りやすいジャンル、ライブの唯一無二の一体感、一度見れば誰もが元気になれる、真面目もふざけるのもすべてが全力だけど、でもいつも何かが足りない、そして、羽村という帰る場所があること。音楽や芸術は人によって感じ方が違うもの。もちろん、作品の素晴らしさからその作品を好きになる方もたくさんいますが、ただ、リフレンズが好き、応援したいと思っていただけている方々は、もしかすると、その一生懸命さ、がむしゃらさ、まっすぐさなどの人間性的な部分から好きになって行く人の方が多いのではないかと思っています。彼らの人間としての魅力にひかれていく。正直、アーティスト的なスマートなかっこよさはないのかもしれませんが、それも彼らの魅力なのかもしれません」

-ミオヤマザキも話題ですね。

岩崎 「『メンヘラ女子』が社会現象になっている中で、12月24日にEPICレコードジャパンから『民法第709条』という、不倫をテーマにした楽曲でメジャーデビューしました。ジャケットには俳優の石田純一さんにお願いをし、『不倫は文化です』から『不倫は犯罪です』というキャッチコピーを伝えています。発売前からプロモーションビデオが自主規制になったりと問題がたくさんです」

-そして、フラチナリズムです。

岩崎 「札幌への移住、4月10日に札幌で行うライブで2000人満員にするまで帰れないなど電波少年のような企画で突き進む崖っぷちアラサーバンドです。インディーズにも関わらず、オリンパスホール八王子を満員にし、そして、来年5月23日に再度、オリンパスホール八王子で『メジャーデビューだよ全員集合』と銘打って開催するワンマンライブも既に手売りでソールドアウトしております。八王子でレギュラー番組を持ち、 彼らを応援している企業は40社以上。下手なスポーツチームよりスポンサーがいる幸せなバンドです」

■「今でも売れないのではと思ってます」

-フラチナリズムとの出会いは?
岩崎 「約2年前ですかね。今でも覚えてます。初めて見た時、絶対売れないと思いました(笑)」

-どうしてですか?
岩崎 「『俺、歌うまいでしょ?』『俺たち演奏かっこいいでしょ?』『なんで売れないんですかね?』と斜に構えたメンバーたちが鼻についた。そのころ僕も若かったので『もうやめたら? マジつまんないよ、君たち。音楽の自慰じゃん』と言い放ってやりました」

-音楽性については、どう評価されていますか?
岩崎 「今でも売れないのではと思ってます(笑)。八王子で良くも悪くもぬるま湯に浸かってしまっていて、何をやっても何を出しても、ある程度、応援してくださる方がいる状況で『おらが町のスター』に自分たちが浸ってしまっているのが良くないかなと。ただ、流しという活動を通して、ボーカルのモリの嫌な部分が抜けたというか。頭が良すぎるんですよ、彼。自分に利にならない人には本当興味ないというか。こんなこと言っていいんですかね?(笑)」

-大丈夫だと思いますよ(笑)
岩崎 「目の前の人を楽しませることに全力を注ぐようになったのが今のフラチナリズムがここまで大きくなった一番の原動力です。その部分を忘れないことだけですね。あとは、モリ君が調子乗らないようにすることを一番気をつけております。『KAN&PAI』『幸せのキセキ』とあと1曲があれば、かなり光が見てくるんですけどね」

-オリンパスホール八王子でのライブでは最後に「重大発表」をされましたが、いつ頃から準備されていたのですか?
岩崎 「本番の1週間前ですかね。たぶん会場の全員がメジャーデビューの発表を予想していて、普通ならそのままいくんでしょうが、予想通りというのが本当に嫌いで。2000人の誰もが予想していない発表をしたいと思っていました。あと、このまま5月23日まで八王子で活動していたら、8月のオリンパスホールより確実に来てくださる方々が減ると思ったからです。人間が一番怖いのは慣れで、そして人間はそれに一番弱い。慣れるとそのまま楽をするようになります。その慣れが生まれるなと思ったので」

-それにしても、札幌への移住には驚かされました。
岩崎 「『5月までの間で一番過酷でしんどい地域はどこだろう?』『あ、札幌』というくらいです。修業ですからね。……なんか本当にすいません(笑)」

-周りからの反応はいかがでしたか?
岩崎 「全否定されました。特に八王子の皆さまやメンバー、マネジャーから。ですが、あの時も今も本当にやって良かったと思ってます」

-メンバーや八王子の皆さんに向かってメッセージをお願いします。
岩崎 「メンバーへは『がんばれ!負けるな!!』。八王子の皆さまには、本当にすいません。ですが、帰る場所があるということが彼らの頑張る原動力になってます。どうかおおらかな目で見守ってやってください」

■「僕、何もできない」

-会社としてのモットーやコンセプトは?
岩崎 「僕の持論ではございますが、強い組織やチームを作るために大切なことは一番できない人に歩幅を合わせて進んでいくことだと思っています。置いていくことは簡単です。そして遅れている人を待つことはしんどいことでもあります。歩幅を合わせて、『大丈夫、一緒に頑張ろう』と励ましあって何かに向かっていくこと。そしてみんなで上がっていくこと。それは不器用で、不格好であり、時間もかかりますが、バンドであり、チームであり、僕の会社なんじゃないかなと思っています」

-待つことも大事なことですか?
岩崎 「うちの会社の合言葉は『まだいける!』です。それに、好きなことを仕事にしている以上、自分たちが面白いと思っていないことをお客さんに届けることは妥協や怠惰だと思うので、それだけは絶対にしないよう心がけています」

-日ごろはどんな仕事をされているのですか?
岩崎 「僕、何もできないので(笑)。何もできないことをいいことに周りに迷惑ばかりかけていると自覚していますが、あまり直すつもりもないです。アプリも作れなければパソコンもあまりできない。映像も編集できなければ、音楽ソフトで曲も作れません。でもだからこそ、その世界のできる限界を無視できるのかなと。そこからしか新しいことや面白いことは生まれないと思っているので」

-気をつけていることは?
岩崎 「1つは目線を彼らに合わせること。上から頭ごなしに押し付けるわけではなく、いつもバンドが答えを導き出せるように誘導してあげることです。結果はもちろんですが、朝まで話し合う過程の部分も彼らの大事な要素になります。もちろんできる限り付き合うんですが、最近はもう朝まで付き合うと次の日に響くようになってしまって」

-体力の限界ですか(笑)
岩崎 「2つ目は時には圧倒的な引率力で引っ張っていくことです。迷って、悩んで、答えが見つからずに止まってしまった時に、絶対大丈夫と引っ張ってあげられるように心がけています。そして、調子のいい時には怒る。調子の悪い時にはほめる。このいつも逆の部分は常に意識をして触れ合うよう努めています」

-今後の目標は?
岩崎 「僕が社員に怒られないようになることですかね。今日より明日少しでも良くなるようにと思っています。いつもいい時が続くわけではないので、悪い時に笑えるような組織を作りたい。『ごめん会社つぶれちゃうかも』といっても付いてくれるようなチームができればって、それは無理か(笑)」

-大きな目標ですね。
岩崎 「僕の2人のオーナーが引退するまでに、自分が育てた、どこの馬の骨だかわからないような、僕のような人間が育てたアーティストが武道館に立つ姿を見せてあげたいです」

-最後に、読者の皆さんに向けて一言お願いします。
岩崎 「ちょっと偉そうになってしまいますが、少しだけ会う人への感覚や目線を変えて接すると嫌いな人も好きになってきます。いや、嫌いな人の好きなところを見つけるようにするというんですかね? いつもその部分は意識して打ち合わせや仕事に臨んでいます。そして、いかにその人に衝撃を与えられるか。なんでもいいんです。会ってよかったって思ってもらえるように心がけるんです。自分と話した後に、相手に対して笑いでも怒りでもどっちでもいいと思うんですが、必ずテンションを上げて別れるということ。これだけできればもっといろんなことが良くなると思っています」

-人との付き合い方は大事ですね。
岩崎 「別にめちゃくちゃしたいわけじゃないんですが、たまたま思いついたことが今まであまりやったことのないことで、それを実現しようとするんだから、そりゃ賛否両論あるとは思うんです。でも、ちょっとやそっとじゃへこたれないし、今までと変わらず頑張っていきます。こんな仕事の仕方が許されるのも20代までなので、あと1年、全力で笑って大暴れしようかなと。そう言いつつ、いつもと変わらず30代でも40代でもこんな自分でいると思いますけど(笑)」

-ありがとうございました。

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